保育ルームKanonヒストリー

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介護事業の経験

介護事業の経験

私は、以前は介護業界で仕事をしていました。
介護保険制度が2000年4月に発足し、民間業者が挙って参入していきました。
その中の、M電工介護事業部に所属し、介護ショップの経営サポートを7年間勤めてまいりました。
介護業界の現場は、ケアマネジメント機能の低下や民間事業者の参入障壁、介護施設の供給不足など、介護サービスの質・量両面に問題点が顕在化していました。

介護保険の目的は、高齢者ができる限り住み慣れた家庭、地域において、その有する能力に応じていきいきと自立した生活を営めるよう、必要なサービスを社会的に提供し、保健医療の向上および福祉の増進をはかることにある。とありますが、多くの現場は理想とはかけ離れています。
介護に疲れ切った家族、「早く死にたい、長生きするもんじゃない」とそして、儲け主義に奔る経営者と福祉を全うしたい現場スタッフとのギャップ。
介護報酬の不正で大企業Kが摘発されたのは大きな社会問題になりました。

立ちはだかる矛盾・障壁

大都市部では、特別養護老人ホームなど施設の供給不足により、希望者が入所待機を余儀なくされていますが、現状では、特別養護老人ホームなど施設介護分野への民間事業者の参入は厳しく規制されていることや、施設介護へのニーズが急増し、施設介護から在宅介護へのシフトが進まず、その要因としては、施設介護の利用に係る経済的な負担の低さがあり、ほとんどの方が在宅では介護できずに施設への入所を希望し、在宅サービスとの間に著しい不均衡が生じています。

今日では、介護の業界も、需要と供給バランスが崩れ、過当競争になり、体力の無い企業は日々撤退を余儀なくされています。
このような問題を目の当りにしながら、自分自身の心の葛藤がありました。
「ゆとりと笑顔のある暮し」の実現を理念に抱えながらも、介護の現場へなかなか役立ちを見出すことが出来ず、ただなんとかしたいと言う思いだけが募る日々でした。

役立ちとは

松下幸之助社主の遵奉すべき7精神
これを毎朝、唱和しています。

一、産業報国の精神
産業報国は当社綱領に示す処にして我等産業人たるものは本精神を第一義とせざるべからず
一、公明正大の精神
公明正大は人間処世の大本にして如何に学識才能を有するも
此の精神なきものは以て範とするに足らず
一、和親一致の精神
和親一致はすでに当社信条に掲ぐる処個々に如何なる優秀の人材を聚むるも
此の精神に欠くるあらば所謂烏合の衆にして何等の力なし
一、力闘向上の精神
我等使命の達成には徹底的力闘こそ唯一の要諦にして
真の平和も向上も此の精神なくてはかち得られざるべし
一、礼節謙譲の精神
人にして礼節を紊り謙譲の心なくんば社会の秩序は整わざるべし正しき礼儀と謙譲の徳の存する処
社会を情操的に美化せしめ以て潤いある人生を現出し得るものなり
一、順応同化の精神
進歩発達は自然の摂理に順応同化するにあらざれば得難し社会の大勢に即せず人為に偏する如きにては決して成功は望み得ざるべし
一、感謝報恩の精神
感謝報恩の念は吾人に無限の悦びと活力を与うるものにして
此の念深き処如何なる艱難をも克服するを得
眞の幸福を招耒する根源となるものなり

難しい言葉が続いていますが、立派な社会人企業人になる為に、とても良い精神だと思っております。

「役立ち」と言う「行為・行動」をどのように自分自身で体現できるかを模索している中、保育業界の待機児童解消問題」をニュースで知り、お困りの方が非常に多いことを知りました。
そして、ひきつけられる何かがあったのです。
それは、私が経験した介護業界の様相が、まさに保育の現場にも起こっていることでした。

保育業界参入を決意

この待機児童の問題は、民間業者の参入障壁や、認可無認可の利用料差、そして行政の対応の遅れなど、全く介護業界と構造が同じだと思ったのです。

今日、待機児童数増加の問題は未だニーズを満たす状態になく、社会において非常に重要な問題となっています。

これは単にひとつの問題ではなく、少子高齢化・労働市場・福祉などと密接に関わり合っており、私たちの将来に大きく影響を与えうると思われます。

女性の社会進出という観点でも、自発的な働きたいという欲求からばかりではなく、不景気によって共働きによる収入が必要不可欠にある家庭が少なくないことを、一般的な社会情勢からばかりではなく、私の友人知人の環境からも感じていますし、育児ストレスなどの問題からも現在は親が働いている、いないに関わらず
保育の必要性は高まっているのです。

しかしながら、保育園に預けたくても入所待ちになり、すぐに預けられず就職できなかったり、突発的なことがあっても気軽に預けられる所が少ないというのが現状です。

こういったことから保育事業は社会的貢献意義が高い上に、自分自身、地域に「役立ち」を体現できる!!事業であると感じ、保育事業への参入を決意したのです。

自らの子育て体験

自らの子育て体験

私には息子が一人います。
平成12年・西暦2000年生まれ(俗に言うミレニアムべビー)
狙ったわけではありません。
自分としては、女の子が欲しかったのですが、生まれてみればかわいいものです。
名前は「涼雅りょうが」と名付けました。
意味は、(7月11日生まれでセブンイレブンです)
季語に涼があったので、「COOLに優雅に他者を凌駕する」です。

人は何のために生まれてくるのか?なぜ生まれるのか?
「ただ、それを知る為に」・・・。哲学的です。
「幸せになる為に・・・」。こう思いたい、こうなってもらいたい。
そんな思いのもとに、生まれてくれた涼雅ですが、ある日の夕刻、衰弱しきって仕事から帰宅した祖母に発見されました。・・・育児放棄。
もう少し発見が遅かったら・・・
我が子は自分で守る。こうして父子家庭が始まりました。

父子家庭には母子家庭と違い、自治体の経済的支援が全くありませんし、子どもを保育園に入れるにしても、仕事を選ばなければなりませんでした。

役所でファミリーサポートセンターを知り、保育園への送迎を頼みました。
これも毎日続けると、けっこうな出費になります。早く帰れる日は、保育園に迎えに行きますが、ママたちがぞろぞろ居る中に入っていくのは、とても恥ずかしかったことを覚えています。

また、週末にはふとんや着替えを持ち帰らなくてはならず、両手いっぱいの荷物と息子を車まで運ぶのは一苦労でした。

サポートセンターの方が急に来れなくなった日があり、その日は息子を満員電車に乗せて会社まで行きました。
すし詰め状態もキツイですが、満員電車で泣かれた時は冷たい周りの視線が痛く、自分も子どもをあやす術を知りませんでした。

途方に暮れ、泣きじゃくる息子を床に置いてしまいました。
それを見た女性が「だっこしましょうか」と声をかけてくれました。

感謝の気持ちと、情けない自分に対する虚しさがありました。

このような日々を数年続けたある日、保育園にお迎えに行くと、周りの子どもたちからこのような声が聞こえてきました。
「りょうがくんちは、ママが来ないんだよね」

平気で人を傷つけることを子どもは言います。
子どもだから仕方がない。でも怒りがこみ上げてきました。

なんとも言い難い刹那そうな涼雅の顔が今でも忘れられません。
やはり子どものためには両親のいる家庭をと思い、現家内と出会いました。
涼雅には将来苦労してもらいたくないと、早期教育にも力を入れました。

スイミング、ヤハ音楽教室、英語教室、サッカー、空手、右脳教育・・・
特に、期待して通わせたのが、当時テレビで紹介されていた、右脳教育の「七チャイルドアカデミー」でした。

月謝が25,000円ぐらいだったと思います。

この時、涼雅は3歳6ヶ月でした。

週に一度、小一時間のレッスン。
レッスン中も親は付き添っていなければいけません。

週一回のレッスンでは効果はほとんど上がらないので、レッスンが終われば、次のレッスンまで毎日、自宅で教材のカリキュラムをやることになります。

これが、なかなかできません。
同じクラスの、早くから(0歳~1歳)レッスンを受けている子は、英語や数字をスラスラ言っていたり、集中力や落ち着きがあり、母親も誇らしげにわが子を見ています。

幼児の段階で明らかに差が付いている。

そう思いましたが、今となっては、少なくともレッスンの効果はあったと思います。
しかし、もっと早くに、そしてより良い環境でさせたかったと思います。
早期教育は、3歳では遅い。それが我が子を通しての実感です。
最近では脳科学が各メディアで取り上げられており、早期教育のメリット・デメリットが科学的根拠により示されてきています。
ただし、早期教育は、本人にとって「楽しい」がもっとも大切であり、継続が必要です。

家庭ではなかなか毎日こなせないカリキュラムを、確実に毎日実行できる。

そういう環境が当時、自分にあったなら・・・・

保育目標達成のために

  • 心身ともに明るく元気な子ども
  • 仲良くいっしょに遊べる子ども
  • 誰にでも優しい、思いやりのある子ども
  • 規律ある生活態度・生活習慣を身につけた子ども
  • 主体性・自主性のある子ども

これが保育ルームkanonの保育目標です。
保育目標達成のためのプロセスは保育園によって様々です。
優しい子どもに育つにはどのような過程(接し方、しつけ、言葉)が必要なのか?
仲良くいっしょに遊べるためには、どのような教育・環境が必要なのか?
昨今では、早期教育幼児教育には賛否両論ありますが、

上記に掲げた保育目標を実現しようとすれば、早期教育は絶対に必要なのです。
では、そのプロセスの中身とは何か?

それは「EQ」(心の知能指数)を育てることです。
心の知能指数とは

  • 共感
  • 気持ちを表現し理解する
  • 感情の制御
  • 人に好感を持たれること
  • 人間関係の問題解決能力

自分の気持ちをコントロールし、相手に共感する。
共感があって、社会性の芽生えがあります。
円満な人を育てるためには、「言葉」を数多く教えます。
語彙の豊かさは、思考の豊かさにつながります。
愛情に満ちた語りかけやスキンシップにより、知能だけではなく、情緒を育ててゆきます。
豊かな感情を育てるために厳選された絵本を毎日読み聞かせることで、情緒豊かな子どもを育てられます。
これらの活動の先に保育目標の達成が見えてくる。そう信じています。

終わりに

Kanon(カノン)という言葉の意味としては色々あり、各種辞書によると以下のような意味があるようです。

  • 音楽用語で【復唱曲・繰り返し】
  • 規則、標準、基準、規範、基本方針

保育ルームkanonは、皆さまのお子様達の笑顔が絶えない、楽しい歌声や笑い声が鳴り響く園にしたいという願いを込めてカノンと名付けました。

保育園で迎える乳幼児期は、人間の人格をつくる発達上とても大切な時期です。
一人ひとりの人格が成熟するためには、安定した環境や人間関係の中で愛され、人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感を感じながら、道徳性の芽生えやあたたかな心をもった人として成長していきます。

だからこそ、私たちは豊かな愛情と情報・環境を持ち子どもの人権や主体性を大切にしながら、子ども、仕事を持つ保護者、養育者、家庭、地域社会のよきパートナーとして保育を実践してまいります。